ASIC開発、なぜ難しい?

コンサルティングのご相談をいただく中で、よくASIC開発を成功させるための本を探しているのですが、どこにも良書が見つからないんです!というお話を耳にします。そのお悩みの真偽はさておき、そんなとき私はいつも、ちょっと不敵に「それは、私がまだ本を書いていないからですよ」とお答えすることにしています。

というのも、かつて私がエレクトロニクス業界の最大手企業に新入社員として入社し、配属された研究開発部門は、ちょうどその年に立ち上がったばかりの新設部隊でした。そのため、開発のイロハを親切に教えてくれる先輩もおらず、とにかく自分で考えて道を切り拓くしかなかったのです。その後、時代の移り変わりとともに手がける最終商品は変わり続けましたが、ロジックICからFPGA/PLD、大規模FPGA/ゲートアレイ、そして最先端のASICへと、開発規模が縮小することなど一度もありませんでした。ムーアの法則に寄り添うように、文字通り「大規模・複雑化」の最先端を駆け抜けてきたわけです。しかし、どんなに激しい忙しさの中に放り込まれても、私は常に「どうすればもっとお気楽に、スマートに開発できるか」を自問自答し、新しい開発手法を自分自身で革新し続けてきました。

私自身、プライドなんて相当低い部類の人間だと思っているのですが、不思議と昔から「人に手取り足取り教わる機会」には恵まれませんでした。だからこそ、「自分でとことん考え抜く開発」をここまでリードしてこられたのだと思っています。今振り返れば、そんな私の尖ったやり方を温かく許してくれた寛容な諸先輩方や、多大なるご協力をいただいた数々のベンダーさんには感謝しかありません。もし、そんな私の30年以上の泥臭い知見がこれからの日本の未来に少しでもお役に立てることがあるとすれば、これまでお付き合いいただいた皆様から得た知見をもって、次世代のエンジニアや現場の皆様に「恩返し」をすることなのかな、と感じています。